食を届け続ける。
人を大切にしながら。
健康に働き、自分の時間も
大切にできる農業を、次の世代へ。
有限会社エスアンドエムは、2004年8月に群馬県沼田市で設立しました。
その後、前橋市へ拠点を移し、長くイベント広告事業に携わってまいりました。
主な仕事は、商業施設へお客様が足を運ぶきっかけをつくること。施設やお店、お客様が主役であり、私たちはその脇に立って支える役割です。表に名前が出る仕事ばかりではありませんでしたが、人が集まり、笑顔が生まれ、お客様の商売につながる。そのお手伝いに誇りを持っていました。
しかし、インターネットやスマートフォンの普及によって、情報の届け方も、人の集まり方も大きく変化しました。これまでと同じ仕事を続けるだけでは、会社も雇用も守り切れない。
そう考え、事業の第二の柱を探す中で出会ったのが、水耕栽培と糸みつばでした。
みつばは、日本の食文化に欠かせない「和のハーブ」です。
料理の主役になる機会は多くありません。それでも、お椀に添えられた香りや、料理を引き立てる彩りには、みつばならではの役割があります。目立たなくても、そこにいてほしい存在。
その姿が、お客様を支えてきた私たちの仕事と重なりました。
この名脇役を、自分たちの手で育て、食卓へ届けたい。
そうして、2019年4月にみつばの出荷を開始しました。
翌年には、新型コロナウイルスの感染拡大によって、イベント広告事業が大きな打撃を受けました。人を集めることが仕事だった私たちにとって、集まることそのものが制限される状況は、非常に厳しいものでした。
そのとき、始めていた農業が、会社と雇用を支えてくれました。
事業を続けることの重みと、食を届ける仕事の責任を、改めて感じた出来事です。
2021年12月には事業ごとの組織を整え、エスアンドエムは農業を中心とする会社として歩みを進めてきました。
私たちには、三つの経営理念があります。
1、生命の源「食」を、つつがなく供給し続けること。
2、ここに集う皆さんが、人に優しく、健康であり続けること。
3、自然に立ち向かうのでなく、自然に寄り添い、順応すること。
この三つは、日々の仕事や経営判断のよりどころです。
この経営理念には、明確な順序があります。
第一の「食を供給し続けること」を果たすには、第二の「ここに集う皆さんが健康であり続けること」が欠かせません。そして、その健康を守りながら生産を続けるために、第三の「自然に寄り添い、順応すること」を実践しています。
食を届け続ける責任を果たすには、それを支える人の健康が必要です。特に、人の健康を大切にしたいという思いには、私自身の経験があります。
私は2017年1月に心筋梗塞を患いました。それまでのように、無理を重ねて仕事をすることはできなくなりました。仕事を続けたい気持ちがあっても、体がついてこなければ続けられません。自分の体と向き合う中で、働き方についても深く考えるようになりました。
自分が無理できないのに、一緒に働く人へ無理を求めたくない。
その思いから、作業の進め方や設備、勤務体制を見直し、出荷作業を午前中に終える体制を整えてきました。仕事を終えた後には、家族との時間や趣味、休息など、それぞれの暮らしを大切にしてほしいと考えています。
仕事を続けるために、人生を削ってほしくありません。
その思いを日々の仕組みにするため、社員の健康管理の一環として、理学療法士兼柔道整復師によるボディーバランス整体を月2回受けることを社内制度として定めています。また、パートの皆さまにも、施術を受けた際に健康促進手当550円を支給する制度を導入しました。
「健康でいてほしい」と声を掛けるだけでなく、自分の体をいたわる機会を会社として支えたい。仕事のためだけでなく、仕事を離れた時間も健やかに過ごしてほしいという願いを込めています。
当社には、子育て中の方から、定年退職後の新しい働き方を選ばれた方まで、さまざまな世代の仲間が集まっています。
長年働いてこられた方には、その方ならではの経験があります。周囲への気配り、作業への丁寧さ、約束を守る姿勢。日々の仕事の中で、私たちが教わることも少なくありません。
「それこそがセカンドライフですね」と声を掛けていただいたことは、今も心に残っています。
定年を迎えても、人とのつながりや、自分の役割を感じられる場所がある。仕事をして、仲間と言葉を交わし、家へ帰れば自分の時間を楽しめる。そうした日々を支える「第二の職場」でありたいと思っています。
もちろん、食材を扱う仕事には責任があります。作物の状態を確かめ、一つひとつの作業を丁寧に進め、品質を守って出荷する。忙しい時期もあります。
だからこそ、誰か一人の頑張りに頼り切らず、仲間と協力して仕事を進められる環境が必要です。健康で働き続けられることと、責任を持って仕事をすること。その両方を大切にしています。
作物を育てる環境についても、同じ考え方で向き合ってきました。
天候は、私たちの都合どおりには動いてくれません。暑さや寒さ、日照の変化に目を向け、作物の様子を見ながら、施設内の環境を整えていく。自然に寄り添い、変化に順応するために、設備の導入と日々の改善を重ねています。
設備を入れれば、それだけで良い作物ができるわけではありません。現場で気づいたことを共有し、なぜそうなったのかを考え、次の仕事に生かす。一人ひとりの経験と判断が、生産を支えています。
出荷を始めて以来、出荷すべき日に一度も欠かさず、届け続けてきました。私が何より誇りに思うのは、この積み重ねです。日々現場を支えてくれる仲間と共に守ってきた歩みを、これからも大切にしていきたいと考えています。
そして今、次の世代へ事業を引き継ぐための育成にも取り組んでいます。
後継者には、現場で判断する機会を渡しています。うまくいったときも、思うような結果が出なかったときも、その判断に至った考え方を一緒に確かめます。経験を重ね、自分で考え、仲間と共に責任を果たせる経営者へ育ってほしい。それが、私の願いです。
引き継ぐのは、土地や設備、栽培方法だけではありません。
ここで働く人の暮らし。お取引先との信頼。そして、食を届け続ける責任です。
私一人が頑張って続く会社から、次の世代が自分たちの力で歩んでいける会社へ。
そのための準備も、今の経営者である私の仕事と考えています。
みつばは、これからも食卓の名脇役です。
そのみつばを育てる私たちも、毎日の食卓と、ここに集う人の暮らしを支える存在でありたい。
人に優しく、健康で、自然に寄り添いながら、今日の仕事を明日へつないでまいります。
今後とも、有限会社エスアンドエムをよろしくお願い申し上げます。
有限会社エスアンドエム
代表取締役社長 八須賀 松夫